ろ材とは?

家庭用浄水器の機能については「浄水器とは」のコーナーでご説明していますが、このコーナーでは、浄水器の基幹材として、浄水器の除去性能の役割を担っている”ろ材”について、少し専門的な内容も含めご紹介します。

家庭用の浄水器や浄水シャワーに使用されているろ材には、次のようなものがあります。

1.活性炭
1-1 特徴

資料提供:浄水器協会会員

浄水器には、遊離塩素や揮発性有機化合物(クロロホルム等)、カビ臭等を除去するために“活性炭”が使用されています。活性炭とは、ヤシ殻や石炭などの炭素物質を原料として、高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔(直径0.4 〜20nm)を持つ炭素(図-1)です。

図-1 活性炭の微細孔生成の原理

資料提供:浄水器協会会員

図-2 活性炭微細孔の概念図

この微細孔は、炭素内部に網目状に存在しているため、その微細孔の壁面は大きな面積(500〜2,500 m2/g)を有しており、その壁面に種々の物質が吸着します(図-2)。

ほとんどの活性炭は、90%以上が炭素から構成されています。よく精製された活性炭は、食品添加物あるいは薬用炭としても使用されています。

右の写真は、ヤシ殻活性炭の表面を、走査型電子顕微鏡で2,000倍に拡大したものです。写真では、表面に小さい孔が無数にありますが、これは、植物である、ヤシ殻の導管に由来する孔です。

一方、活性炭の微細孔は、導管に由来する小さい孔と比較してとても小さく、電子顕微鏡の倍率としては、100万倍以上に拡大しないと、観察する事ができません。このように活性炭の微細孔を直接観察する事は現在の技術をもってしても困難です。

これほどの微細な孔が、無数に活性炭には存在しており、それが、水の中の不純物を、効率的に吸着します。

ヤシ殻活性炭の表面(倍率2,000倍)

資料提供:浄水器協会会員

1-2 活性炭ができるまで

ヤシ殻水蒸気賦活炭の製造方法(例)について説明します。

資料提供:浄水器協会会員

まず、ヤシ殻を加熱した後、所定の粒度に整粒されます。次に750℃〜1,050℃の温度で水蒸気等のガスと反応させて微細孔を発達(賦活)させ、その後、活性炭中に含まれる不純物を取り除くため、酸による洗浄を行い、乾燥します。最後に所定の粒度に破砕、ふるい分けを行い製品となります。

資料提供:浄水器協会会員

1-3 浄水器カートリッジとしての活性炭の使われ方

浄水器カートリッジは、活性炭の吸着特性が十分発揮できる構造に設計されています。

浄水器カートリッジの使用期限などについては、各製品の説明書をお読みいただき正しくご使用ください。

資料提供:浄水器協会会員

1-4 浄水器カートリッジの包装

浄水器のカートリッジは一般的に下の写真の様に個別に包装されていますので、製造メーカーの取扱説明書に従い保管してください。

資料提供:浄水器協会会員

1-5 ヤシ殻活性炭の主な生産国

浄水器用の活性炭の原材料として多く使用されているヤシ殻活性炭の生産は、東南アジアで世界の80%強を占めています。ヤシの木1本から1年間に25個くらいヤシの実が取れます。また、1トンのヤシ殻活性炭を生産するのに約5万個のヤシ殻が必要と言われています。

出典元:株式会社武揚堂の世界地図より

2.亜硫酸カルシウム
2-1 特徴

粒状タイプの概観

資料提供:浄水器協会会員

亜硫酸カルシウムは、CaSO3・1/2H2O の組成を有する物質であり、科学的及び物理的特性は十分に検討された無機化合物です。

日本では、当初、一括して亜硫酸塩として食品添加物として認められておりましたが、その後、個々の亜硫酸塩が指定されるようになり、当時、食品添加物としての使用用途があまり無かった亜硫酸カルシウムは食品添加物の指定から外れました。

一方、欧州などでは亜硫酸カルシウムは、食品添加物として広く使用されています。

 

資料提供:浄水器協会会員

亜硫酸カルシウムは、亜硫酸イオンを、ごく微量に水に溶解しながら、残留塩素と反応するのが特徴です。定量的に残留塩素と反応するため、コンパクトかつ省スペースのろ材スペースで最大限の能力を発揮します。残留塩素との反応速度が速いので、毎分当たりの通水量を多くできる利点があります。

2-2 亜硫酸カルシウムの利用用途

家庭用浄水機器への亜硫酸カルシウムの代表的な利用用途として、”浄水シャワー”への利用が挙げられます。浄水シャワーのろ材としては通水抵抗が低く且つ水道水中の残留塩素分解能力の高い細粒タイプが主に使用されています。
※浄水シャワーについては、別のコーナーでご紹介しています。

2-3 亜硫酸カルシウムができるまで

カルシウム塩と亜硫酸塩を反応させ亜硫酸カルシウムを得ます。その後、遠心分離・乾燥を経て粉末化したものを造粒し、乾燥・粒度選別を行いろ材となる亜硫酸カルシウムが完成します。

資料提供:浄水器協会会員

3.分離膜
3-1 特徴

浄水器に使用されている分離膜には主にその公称孔径によりいくつかの種類がありそれぞれ特性があります。

@精密ろ過膜(MF膜)
 公称孔径:0.1 〜 10μm
 除去可能:懸濁物質
A限外ろ過膜(UF膜)
 公称孔径:2 〜 100nm
 除去可能:懸濁物質、ウィルス
Bナノろ過膜(NF膜)
 公称孔径:2〜10nm
 除去可能:懸濁物質、低分子物質
C逆浸透膜(RO膜)
 公称孔径:2nm未満
 除去可能:懸濁物質、溶解塩類
 

◆膜の公称孔径は左に示す@から順に小さくなっていきます。これに伴って、@から順に除去できるものの大きさも小さくなります。

ろ過膜の長所として、一定以上の大きさの不純物を確実に除去できるほか、適切な交換により、その除去効果を保つことができます。

※ろ材データベースとのリンク
詳しくは「ろ材データベース」のコーナーをご参照ください。

3-2 ろ過膜の製法
@MF膜

MF膜には有機MF膜(合成樹脂製の中空糸膜や平膜)と無機MF膜(セラミック膜)があります。

その製法は種々ありますが、よく用いられる方法をご紹介します。

【有機MF膜】

延伸法:ポリエチレン樹脂を加熱溶融後に延伸し、ろ過膜としての機能を持たせたもの。

相転換法:ポリマー樹脂を有機溶媒(良溶媒)、水(非溶媒)、エタノールに混合して調製した原料液を薄く広げ熱風乾燥し、溶媒を除去してろ過膜とする乾式法、乾燥時に良溶媒がある程度揮散した段階で水につけ、良溶媒と水を置換してポリマーをろ過膜とする湿式法がある。

【無機MF膜】

セラミック材に開孔剤と成形用樹脂バインダーを加えてよく練り、成形したのち高温焼成してろ過膜とする。

資料提供:浄水器協会会員

資料提供:浄水器協会会員

AUF膜

ポリマー樹脂のペレットを極性有機溶媒に溶解し、膜性能調製のためのポリマー用膨潤材や非溶媒を添加して脱泡後、紡糸ノズル供給する。加温しながら紡糸ノズルより中空部を形成するための芯液とともに凝固槽へ押し出し凝固したものを巻き取り成形したもの。

(UF膜モジュールの外観)

資料提供:浄水器協会会員

BNF膜

多くが異種の膜素材を重ねた合成複合膜である。 例としてポリアミド型複合膜の製法は、支持膜となるポリスルホンUF膜を純水洗浄し、アミン液に浸し多官能アミンを付加する。その後、酸クロライド液に漬けUF膜上で多官能アミンと酸クロライドを重縮合反応させ高分離性能を有する薄い緻密層を形成しNF膜とする。

資料提供:浄水器協会会員

 
CRO膜

BのNF膜同様、異種の膜素材からなる合成複合膜である。酢酸セルロース膜やポリスルホン膜、ポリアミド膜の表面に、NF膜同様の界面重縮合を施し、緻密層積層したもの。

資料提供:浄水器協会会員

3-3 ろ過膜の寿命

ろ過膜には寿命があります。

ろ過膜はその働きから,膜の表面に除去対象物質が蓄積し、目詰まりを起こしたり、汚れが付いて、ろ過の性能が低下することがあります。また、ろ過膜は消耗品でもあります。

そのため、ろ過膜の除去性能を最大限発揮するためにも、定期的な交換が必要です。

交換頻度はろ過膜の種類やその使用状況にもよりますが、浄水器やカートリッジに記載されている交換時期の目安にのっとり行って下さい。

カートリッジの保管に関しては、乾燥に弱いろ過膜もありますので取扱説明書に記載の通りに保管いただく必要があります。

4.ビタミンC
4-1 特徴

ビタミンCはレモンに代表される柑橘類に多く含まれ、なじみの物です。化学名をL-アスコルビン酸と言い、単にアスコルビン酸とも言います。

還元作用があり、水中で水素イオンを放出し、遊離塩素と反応し残留塩素を除去する作用があります。

出典元:武田薬品株式会社フード・ビタミン事業部(2003年)

 
4-2 カートリッジの外観

右の写真は、シャワーヘッドに組み込んで使用される浄水シャワーの一例です。

資料提供:浄水器協会会員

5.イオン交換樹脂
5-1 特徴

イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に区別されます。陽イオン交換樹脂は+イオンを交換し、陰イオン交換樹脂は−イオンを交換します。浄軟水器は一般的に陽イオン交換樹脂を使用し、硬度成分(カルシウムイオンやマグネシウムイオン等)をナトリウムイオンや水素イオンにイオン交換し、軟水にします。

資料提供:浄水器協会会員

5-2 イオン交換の原理

生活用水として身近な例として、水道水を ”軟水化”する時の原理を説明します。

「1」硬水、すなわちカルシウムとマグネシウムイオン(Ca2+、Mg2+)を多く含んだ水を陽イオン交換樹脂を詰めた塔(装置)に導入します。 

「2」この水が接触する前は、樹脂の粒子、すなわち陽イオン交換樹脂の母体は陰イオン(R-SO3-)で、これに置き換えが可能な陽イオンであるナトリウムイオンと結合しています。

「3」イオン交換がはじまります。カルシウムとマグネシウムイオン(Ca2+、Mg2+)は樹脂に交換吸着され、そのかわりに樹脂はナトリウムイオン(Na )を放出します。

「4」樹脂はナトリウムイオンを出しつくし、カルシウムとマグネシウムイオンでいっぱいになります。
*流出水は硬度を生じる陽イオンはほとんど含んでいない軟水です。

資料提供:浄水器協会会員

5-3 イオン交換樹脂の製造方法

資料提供:浄水器協会会員

6.サンゴ未焼成カルシウム
6-1 特徴

サンゴ未焼成カルシウムの原料となる風化造礁サンゴ化石は、コーラルカルシウムとも呼ばれ、サンゴ礁を形成する造礁サンゴや、星の砂として知られている有孔虫類等から構成されています。これらの生物は、主に、海水中のカルシウムを摂取して骨格や殻を形成しているため、この風化造礁サンゴ化石(コーラルサンド)は、炭酸カルシウムを主成分とした物質です。

サンゴ未焼成カルシウムは、ろ材として用いることによって水道水のアルカリ度の上昇が期待されます。

6-2 サンゴ未焼成カルシウムができるまで

風化造礁サンゴ化石を洗浄にて脱塩等を行い、加熱乾燥で乾燥殺菌した後、所定の粒度に篩い分けて製品となります。

資料提供:浄水器協会会員


サンゴ未焼成カルシウムができるまでの主な製造工程を以下に示します。

資料提供:浄水器協会会員

 
6-3 サンゴ未焼成カルシウムの利用用途

ろ材として、アルカリ度の上昇などを目的に家庭用浄水器や業務用浄水器、浄水パック等に利用されております。